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序章 まったく新しいセールスパラダイム
【高確率セールス】の講習初日、受講者はセールスについて問われる。しばらく様子うかがいの反応が続いたあと、一気に本音がでてくる。典型的な例を次にあげてみよう。
1. 「セールス」とは何ですか?
最初の反応は教科書どおり、「不足を満たすこと。サービスを提供す ること。利益を示すこと。説得の技術」など。
2. セールスするときの目標は何ですか?
「見込み客に買わせる、金を儲ける、契約をまとめる」。結局「見込み客 に買わせる」ことにつきる、と全員の意見が一致する。
3. 見込み客に買わせるためにあなたは何をしますか?
このあたりから話がおもしろくなってくる。
最初はまず、「相手に商品についての知識や情報を与える。よいサービスを約束する。相手の情報を得る。自分あるいは自分の会社と契約した際の利点を指摘する」などがあがる。
その後やや格調が落ちはじめ、「押しつける。プレッシャーをかける。
ライバル社をこきおろす。味方のフリをする」など。
4. 見込み客に買わせるために今後あなたは何をしようと思いますか?
ここで話が一挙にくずれる。 必ず「どんなことでもやる」、「何がなんでも」と叫ぶ人が出て、あとはとどまるところを知らない。
「おどす。拝みたおす。ごまかす」
「大げさに言う(そのうち嘘をつき始める)。不誠実なこと、いい加減なことを言う(お客さんが好きです、あなたのことが知りたいです、というフリをする、必要とあらばほめる)」
「ペコペコとおべっかを使い、いつでもお役に立ちますと請け合い、人格まで変える。相手がなれというものになる」
5. セールスされているとき客はどう感じますか?
このころにはセールスの本質が浮かびあがる。
「抵抗する。疑う。腹を立てる。おびえる。混乱する。敵意を抱く」
「バカ扱いされている。押しつけられている。追いつめられている。心細い。いじめられている気分」
セールスの過程を楽しむ客もいると言う人もたまにいるが、ほかの受講者から冷たい視線を浴びるのがオチだ。
6. セールスしているときにあなたはどう感じますか?
「まるで自分がセールスをされている客のような気分。ビクビクしている。心細い。頭を下げてばかりいる。悪いことをしている。自尊心がない。こんなにがんばっているのにと思い、いじめられている気分。踏みにじられた感じ。希望を失う。クヨクヨする。腹を立てる。うんざりする」
売っていると気分がよくなるという少数派もいるが、講習の進行と同時にほとんどは意見を撤回する。
7. 売れなかったときにあなたはどう感じますか?
「みじめな気分。傷つく。はねつけられた感じ。ムカムカする。失敗た気分。腹が立つ」
8. 売上げがないまま一日が終わるとき、あなたはどう感じますか?
「負けたと感じる。もう少しマシな仕事はないかと思う。傷つく。ストレスがたまる。うちひしがれる。憔悴する」
9. 世間では、セールスパーソンは信用されているでしょうか、
されていないでしょうか?
(わざわざ聞くような質問だろうかという顔で)受講者はたいがい苦笑して答える。
「信用されていない。当然」
10. 何が販売抵抗を引き起こすのでしょうか?
参加者はたいてい販売抵抗の原因をいくつも挙げる。「プレッシャー、過去の経験、うさんくささ、拝みたおし戦術」。そして最後にだれかが言う、「売ること」。売ること自体が抵抗を引き起こすから販売抵抗と呼ばれるのだ。そして売るというねらいを隠そうとすると抵抗はさらに強くなる。
ここで明らかになるのは、セールスは売り手にとっても買い手にとっても《痛みをともなう》やっかいな作業だということだ。何が原因でそうなるのだろう?
それは今のパラダイムでは《相手に買わせる》ことがセールスの目的になっているためだ。
セールスとは、相手に本来するつもりがなかった何かを「させる」ことであり、無理に誘い説得し圧力をかけるということまで含めた、《買わせるための行為》のすべてを意味する。このようなアプローチを時代錯誤の「伝統的セールス」パラダイムと呼ぶ。
しかし人は無理強いされると気づいたとたんに反発し、反射的に身を守ろうとする。こうして抵抗や疑い、敵意が生まれる。「伝統的セールス」は、どんなにとりつくろっても狩人と獲物の関係である。
魚は水というパラダイムの中に存在する。いつも変わらずそこにあるので、魚は水を意識していない。「水が無い」という状況はありえない。魚がどう動き、何を食べ、どう呼吸し、何をしようと魚のまわりの宇宙を形づくっているのは水なのだ。
セールスにたずさわる人々にとって「伝統的セールス」は、魚に対する水のようなものである。
パラダイムとは何か?
人はパラダイムのことを考えない。パラダイムとはただそこにあるものだ。人の考え方や行動を左右し、可能性の限界も決める。パラダイムは人が情報を受けとる際のフィルターないしレンズ、外の世界を見るときに無意識にのぞいている窓である。 次にそのパラダイムがシフトする例をいくつか挙げてみよう。
平らな地球と丸い地球
かつて人々は「地球は平らである」というパラダイムのなかで暮らしていた。地球が平らかどうかを問う人はいなかった。地球はただ平らだった。そして「地球は平らである」というパラダイムは人々の思考や行動を定めた。このパラダイムのせいで世界探検は最低限必要な範囲だけにとどめられ、可能性も実現の方法も限定された。
そして、あるとき「地球は丸い」ということが証明された。
突然ルールが変わった。船で西へ西へと行けば、出発したところに戻ってくることができる。すべてが変わった。地理学の概念は逆転し、新たな疑問がわき起こった。たとえば、地球が丸いのなら、人はなぜ落ちないのだろう?と。
蒸気と病原菌
昔、医薬の専門家は、病気は空気中の悪い蒸気によって起こるという立場をとっていた。それが診断や治療をふくむすべての医療の前提だった。
後になって、病気の原因は細菌と呼ばれる目に見えない微生物だという説が出たとき、医学界は抵抗し、敵意さえ生まれた。
最終的に細菌説が実証されたとたん、すべての秩序が一変した。新しいパラダイムのなかでは、熟練の医師も素人同然だった。
ニュートンの物理学と相対性理論
長い年月にわたってニュートンの物理学が科学的な理論と探求の土台だった。
アインシュタインが相対性理論およびエネルギーと質量の等価原理を考え出すと、宇宙に対する見方が根本から変わった。時間は相対的で空間は湾曲することがわかったのだ。
いくつかの考察
新しいパラダイムは既存のパラダイムの論理の延長線上にあるものではない。直観の飛躍というべきものである。
「丸い地球」は「平らな地球」の論理からは導き出せない。蒸気が細菌に変化することもない。相対性理論は、ニュートンの法則からは派生しない。
今日にいたるまで、セールスパーソンの目標は《見込み客に買わせる》ことである、という前提(パラダイム)を疑う人はいなかった。
実際、通常人の目にふれないパラダイムが検証されることはほとんどない。しかしパラダイムは人々の行動を規制し、限定する。その結果、セールステクニックを磨くには、客をその気にさせ、反発から生じる壁を乗り越える方法に改良を重ねるしかないと思われていた。
高確率セールス
【高確率セールス】はセールスの新しいパラダイムである。
【高確率セールス】では、パラダイムが「客に買わせる」ことから、《双方向のビジネスの下地があるかどうかを見る》ことにシフトする。
これまで述べてきたように、パラダイムがシフトすると、それにともなってすべてが一変する。既存のパラダイムを新しいものに置き換えるときは、何もかも徹底的に洗い直さなければならない。これまでの大前提およびそこから生まれたアイデアや結論を、ことごとく破壊することになる。それはきわめて危うい、不安に満ちた作業である。
新しいパラダイムは古いパラダイムにおさまりきらず、古いパラダイムを無効にすることも多い。だから人は新しいパラダイムをもてあましてしまう。
かつては、新しいパラダイムの支持者は火あぶりと決まっていた。現代では徹底したバッシングを覚悟しなければならない。
本書を読むために、セールスについての《先入観をいったん忘れて》もらいたい。
本書に書かれていることをすでに知っている知識(信念)の色メガネで見てはいけない。固定観念はいったんわきに置いて読む。
今までのやり方は古いパラダイムでは通用しても、新しいパラダイムでは秩序そのものが異なるのだから。
次に紹介するのは、頭の回転が速く、意欲もあるのに伸び悩んだあるセールスパーソンが【高確率セールス】のテクニックを習得する話である。
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