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売り込まなくても売れる
売り込まなくても売れる 続編

「これは私の読んだ
セールスに関する本で
最も驚きの、そして概し
て確信的な本である。」

ダンカン・マックスウェル・アンダーソン
編集主任
サクセスマガジン
 
Sales Training Techniques



第一章

 サム・イーストマンがセールスを志して五年になる。
 それまでは美術関係の仕事を経て中規模のパッケージ製造会社の印刷部門で働いていた。まだ生産の現場にいるときに、同じ会社のセールスマネジャーが彼の野心としゃべりの才能に注目し、営業をやってみないかともちかけた。
 サムはセールス部門がかかげる収入の額にひかれて承諾した。

 彼は自分が「人好きのするタイプ」だと思っていたので、セールスも楽しめるだろうと思っていた。しかし残念ながら、期待したほどの結果ではなかった。
 セールス部門の一二人中、サムの成績は平均を下回り、やがて彼は不満を感じるようになった。以前は何をしても人より優秀だったのに、営業に二、三年いる間に彼は「燃え尽き」たように感じた。相手に契約を迫る時に経験する、あの強烈な不快感のためにそんなふうに感じるのだと彼は考えた。
「燃え尽き」を忘れられるのは、モチベーションを高めるセミナーを受講した直後の二、三日間だけだった。そこで彼はモチベーションテープを買って車の中で聞いた。テープは彼の気持ちをふるい立たせる効果はあったようだが、しだいに目新しさが薄れていくとまたもとのもくあみだった。
 サムは顧客をとても大事にした。しかし問題は、顧客の数が少ないことだった。飛びこみで新規の客を開拓するのは、一番苦手だった。ほとんど成果が上がらなかったからである。
「もっと積極的に売り込め、もっともっと押しが強くならないといけない!」とセールスマネジャーには言われた。統括マネジャーからは「クロージングの詰めが甘いぞ、もっとがんばれ」とも言われた。
 セールス部門は彼を、「訪問拒否」症や「拒絶恐怖」症に効くとされている別の研修プログラムに参加させた。しかしその症状が変わった様子はなかった。一、二週間の間は気力充実しているが、そのあとはふたたびもとの状態にもどってしまう。
 初めは新鮮に見えたことも、実は古い材料の焼き直しだった。

 セールスマネジャーは、三人のトップ・セールスパーソンの売り込みにサムを同行させた。彼は黙って同席し、じっと耳を傾けたが、彼らのやり方と自分のやり方との間に大きな違いがあるとは思えなかった。
 最初の一人は、派手で色あざやかな資料をひろげ、相手の目をとらえて一気に話す方法をとった。二人めはユーモアセンス抜群の社交家タイプでそれを自分のスタイルにしていた。三人めは信じがたいほど強引だった。

 三人とも、圧倒的な《押しの強さ》で自社のパッケージ製品とサービスのデモンストレーションを行った。客の横やりや反論のスキを与えずに商品説明を行い、最後までやりきった(サムにはできなかった)。おおかたは三人が彼よりずっと神経が図太いということらしかった。
 しかしこの三人のトップ・セールスパーソンでさえ、自分たちも「いつも強気、前向き、アグレッシブでいられるわけではないんだ」、と言った。「商品紹介の途中で客が怒りだしたり、まったく反応してくれない場合もあるからね」、と。

 三人ともがこう言い切った。
「セールスは数のゲームだ。外へ出て、とにかく回数多く売り込み、日々ベストをつくしていれば、それなりの結果は出るものだ。その上で自分のスタイルをもち、反論パターンに対処する方法を身に付ければ、契約率は上がる。強力なクロージングのテクニックを五、六個覚え、常時それを使えばますますアップする。それがセールスだよ!」

 問題は、サムがすでにそれを知っていることだった。
 次第に彼は、自分にはそもそも才能がないのかもしれない、セールスをやめて生産部門へ戻ったほうがよいのではないかと迷いはじめた。
 しかし生産部門では自分が求めているような収入は得られない。思い余って、ついにパッケージ業界専門の求人カウンセラーのもとに相談に行った。彼女はサムに対して、セールスをあきらめる前に、ラップアラウンド・パッケージング社(WPC)のセールス職に応募してみてはどうかと勧めた。
 サムは、とりあえず試してみても損はない、と思って、面接の申し込みをした。

 WPCのアシスタント・セールスマネジャーとの予備面接で、「性格プロフィール」とWPCのセールスアプローチへの適性を診断する筆記テストを受けてもらえないか、と尋ねられた。彼は承諾してテストを受けた。
 数日後に電話があって、セールス部門の上司との面接に来てほしいといわれた。テストのスコアが大変よかったので、彼を訓練生として見込みがあると考えている、とのことだった。

 予備面接でアシスタント・セールスマネジャーは、もし採用になった場合、「わが社の」セールスを習得してもらう、ということを強調した。
 サムが「わが社の」セールスとは何ですかと尋ねると、彼女は【高確率セールス】について少し説明してくれた。
 WPCが売ろうとしているものを必要とし、希望している顧客に対してだけ、エネルギーを使うことを学んでほしい。【高確率セールス】を習得するのは容易ではない。特にセールスについてすでにもっている固定観念を捨てるのはほんとうに大変だ、とのことだった。
「でもね」と彼女は言った。「経済的な意味でも気持ちの負担のうえでも、見返りを考えれば十分努力には値するわ。仕事を楽しみながら高収入を得るチャンスよ」、と。

 話がうますぎてサムが半信半疑だったのも無理はなかった。
 しかしたとえ大げさに言っているとしても、少なくともセールスについて新しいことを学ぶ以外に彼に残された道はなかった。今までの経験から言って【高確率セールス】もよくあるセールス心理学の焼き直しではないかという気もした。
 しかしアシスタント・セールスマネジャーから、【高確率セールス】の習得に関わるもっとも重要な基準は他人への《思いやりと敬意》があるかどうかであり、筆記テストで見る限りサムには適性がある、と聞いて興味をそそられた。
 セールスについての固定観念を放棄するという点に関してはノノどのみち二、三日前にはすべて投げ出すつもりでいたくらいだから、特に問題はない。

 二週間後、彼はWPCで働きはじめた。
 二日間のオリエンテーションの後、セールス・マーケティング部門副部長のビクター・プレストン(以下VP)に会った。サムのトレーニングはVPが担当することになっていた。こわもてのトップ・セールスパーソンをイメージしていた彼は、VPののんびりとくつろいだ雰囲気に拍子抜けした。

 最初のミーティングで、サムはVPに【高確率セールス】を概説してほしいと頼んだ。
 しかしVPに、「まだ早いな。新しい情報が先入観でゆがめられたら何にもならない。【高確率セールス】のようなフレキシブルでまったく新しいアプローチの場合、まずどんなものか見るほうがいいだろう。理屈はあとからついてくるさ」、と言われた。

 数日後、VPとサムはいっしょに最初の営業にでかけ、消費財の製造で年商数億ドル規模のメーカーを訪問することになった。
「WPCがここから注文をもらうようになってからまだ一年たっていない、先方のパッケージビジネスにWPCが占める割合はまだ小さいが、WPCにとっては四番目に大きな得意先だ」、とVPは言った。

 商談に入る前に、VPは彼に対して、なりゆきをじっと見ているように、たとえ助けがいるように見えても口をはさまないようにと念を押した。
 会社に着くと、バイヤーの部屋に通された。自己紹介が終わると、こんなやりとりが始まった。
 バイヤーのアン・カウフマンはいらだっているようだった。忙しいが用件は何か、と不機嫌に聞いた。

VP: お困りのようですね。
アン: あなたには関係ないわ。大事な注文の納品が間に合わない業者さんがいて、にっちもさっちもいかないのよ。
VP: やっぱり出直してきます。
アン: 大丈夫よ。今さら手の打ちようがないわ。
VP: でもお困りでしょう。
アン: 大丈夫といったでしょう。ご心配なく、あなたに八つ当たりする気はありませんから。
VP: 最初の契約の時に、「優良メーカー」待遇を得ようとするなら、最高の品質の商品を納めること、納期を厳守すること、と言われましたね。信用をどれだけ大切にしておられるかはよく承知しているつもりです。
アン: そのとおりよ。うちは在庫と返品を極力減らしてコストを引き下げることによって、業界ナンバーワン収益率の会社になったの。そうするためには、一にも二にも納入メーカーがたよりだわ。
メーカーさんが納期に遅れたり、粗悪品を持ってきたりしたら、うちが調達コストをはるかに超える損失をこうむるのよ。そういう場合、非難の矢面に立たされるのはわたしですからね。
VP: 先週知りましたが、WPCを「優良メーカー」リストに入れてくださったのですね。ご愛顧感謝いたしております。
アン: おたくは製品の品質が確かで納期もきっちり守っていただいているので、今のところとてもありがたく思っているわ。でもこれまでお願いしてきている商品だと、さしあたってすぐ発注できるようなものはないわよ。
VP: ほかの商品にも弊社のパッケージをお使いになりませんか?
アン: うまいわね。ほかの二つの商品用パッケージ・メーカーは問題があってね。
VP: どの商品ですか?
アン: 「サン」と「ムーン」の二種類のパッケージよ。
VP: 問題とおっしゃいますと?
アン: 「サン」の方は品質が今ひとつだし、「ムーン」のほうは今のところまとまった量を扱えないの。
VP: どのくらい深刻な状態なのですか?
アン: 「サン」の場合、アートワークのつくり直しと品質の向上をこれまでに何度も申し入れているの。残念だけど問題は品質だけじゃなくて製造現場にもあるらしいから、気が気じゃないわ。新しいメーカーさんと取引するとなれば、新しい、質のよいアートワークを出してもらわないといけないしね。
VP: 新しいアートワークをつくるのにどのくらい時間の余裕がありますか。
アン: あまりないのよ。最初に見積もりをもらって、プロダクトマネジャーに承認してもらわなければならないから。
VP: 弊社からのお見積もりをご希望されますか?
アン: ええ、できるならね。パッケージの大きさと材質は「スター」の場合とまったく同じ。印刷の種類だけがかなり違っているの。
VP: わかりました。ただ、プロダクトマネジャーといっしょにアートワークをもう一度見直す必要がありそうです。そうすれば見積もりに必要なことを正確に把握できますから。
アン: それはどうかしら。わたしとしては、マネジャーを巻きこむ前に見積もりを見せてもらいたいのだけど。
VP: わたくしどもは、その順序ではビジネスを進めることができません。二回見積もりを出すことになってしまいますので。必要な情報をすべて事前にいただいてから見積もりを作成いたします。そういうことで、最初にプロダクトマネジャーとご相談させていただきたいのですが。いかがでしょうか? それともご不都合がおありでしょうか?
アン: ごもっともだわ。今彼がここに来られるかどうか聞いてみましょう。

 五分後、「サン」のプロダクトマネジャー(PM)が現在使っているアートワークとパッケージのサンプルを持って現れた。ひとしきり自分の要望を述べたあと、彼は、「君のところならこの一七個のパッケージ用の新しいアートワークをつくるのにどのくらい時間がかかるかね」と尋ねた。

VP: アート部門の残業負担を最小限にするために、一七個同時ではなく、急ぐものから順次仕上げるように予定を組むほうがよろしいかと思います。それでよろしいでしょうか?
PM: 結構だ。
VP: ではまず、早急に必要なパッケージの数は?
PM: このうちの四個は五週間以内に納めてもらいたい。
VP: 四個だけでしたら、一週間でアートワークは仕上げさせます。できあがったアートワークをご承認いただければ四週間後にパッケージは納品可能です。ご希望どおり五週間以内の納品に間に合います。いかがされますか?
PM: 実を言えばこの四つのパッケージはすでに出入りの業者に注文済みだ。しかしこの際注文がダブるのは気にしないことにしよう。商品が完成するまでにちゃんとしたパッケージが入手できる確率が、これで倍になるわけだから。
  もちろん、この商品の四半期の利益率は落ちてわたしのボーナスの査定にもひびいてくるだろう。だが君がしっかりやってくれたら、長い目で見てそのほうがはるかに賢明だからね。
VP: では具体的にどうなれば、われわれが必ずご要望にこたえられると確信なさいますか?
PM: 作成途中のアートワークの写しを添えて、進行状況を毎日知らせてもらえるとありがたい。今の業者への注文をキャンセルすることはできないが、もし君のほうで約束をきっちり守ってくれたら、こちらで必要なパッケージの少なくとも半分は君に回すと約束する。たとえ今回向こうのメーカーが間に合ったとしてもだ。連中のおかげで何度も煮え湯をのまされているのだから、もういい加減にちゃんと頼れる相手を見つけなければならん。
VP: 毎朝、「校正刷り」をファックスします。最初の四つのパッケージに関してはどのみち時間外の作業になりますから。それでよろしいでしょうか?
PM: もちろん。大変けっこうだ。
VP: 残る一三個のパッケージを準備させていただくには、どのくらいの時間的余裕をいただけますか?
PM: 八週間から一五週間。君に納品スケジュール表を渡そう。
VP: 納品まで八週間から一五週間もあれば、何も問題はありません。コミットメントをなさるお気持ちはありますか?
PM: どういう意味だね?
VP: そちらがされるというなら、こちらの方はいつでもコミットメントをいたしますが。
PM: それは値段次第だな。そういうことはまずミス・カウフマンのところで取り仕切っている。しかしこの買い付けは最終的にうちの部の会計から出ることになるから、結局わたしの承認がいるがね。
VP: ミス・カウフマンはすでにわたくしどもの価格についてはよくご存じです。こちらの商標「スター」のアートワークからパッケージまで全般をやらせていただいていますから。「サン」についても色とレイアウトだけの違いなので、価格はほとんど同じです。ミス・カウフマンのほうにあした見積もりをお持ちしますが、もし価格に納得されたならば、ミス・カウフマンからの発注をいつごろご承認なさいますか?
アン: 「スター」のほうの値段は許容の範囲内ですよ、平均よりも若干高めというところね。
PM: 値段の問題ではないのだ。最高品質の品を納期どおりに、数が足りないなんてことは絶対にないように、過多分も二%以内に抑えてもらいたい。値段に納得がいけば明日にでも承認しよう。とにかく納期を守ってもらいたい。
VP: 先週「優良企業リスト」に入れていただいたばかりです。つねに一流の品を必ず期日までに納めてきたというのがその理由です。
PM: それを聞いてうれしいよ。ただあまり荷が重いと、つまずくビジネスもあるからな。
VP: 今その問題をクリアにすることをお望みでしょうか?
PM: いや。いずれわかることだ。
VP: (商談中にとったメモを読み返しながら)新しいアートワークへのご要望と全体の予定についてはうかがいました。パッケージの納品スケジュールの割り振りについて合意ができました。あした見積もりをお持ちしますが、値段は今の「スター」の価格とそろえることになっています。
 話しあっておくべき点がほかに何かありますか? ご心配な点はすべてカバーできましたでしょうか。ほかにご要望は?
PM: 今は何も思いつかないな。
VP: ほんとうにこれでご希望どおりでしょうか? 確かですか?
PM: 間違いない。今後取引は君の方に移す方向で。
VP: (バイヤーに向かって)では、ご注文は明日になさるおつもりですか?
アン: ええ、先にいくつかしなければならないことがあるけれどね。最初の発注のときは購買マネジャーのサインがいるのよ。金額が大きいことと、重大な納品スケジュールがあなたの肩にかかることになるのでね。
VP: 購買マネジャーは明日はおられますか?
アン: それもそうだわ。ちょっと確かめてきましょう。

バイヤーは中座し、一〇分後にもどってきた。

アン: 購買マネジャーはあしたも在社の予定です。いま話を通しておいたけれど、あなたのところがうちの懸案事項を解決してくれるというのなら、よろこんで注文書にサインすると言っているわ。
VP: 「サン」のことで今日中に煮つめておくべきことはほかにありますか?
PM: いや、話はもうまとまった。何か質問があれば電話をくれたまえ。迅速な対応に感謝するよ。
VP: どういたしまして。(PMは退室する。アンに向かって)ところで「ムーン」のパッケージについて何か話しておくべきことはありますか?
アン: まだ早いと思うわ。「ムーン」については、おたくの会社が「スター」と同じくらい「サン」でもやれるということを見せてもらってからでも遅くはないでしょう。そちらの負担が大きくなりすぎるのも考えものだし、「ムーン」の状態だと対応するのにまだ何カ月か余裕があるから。
VP: では時期がきたら、われわれに「ムーン」の仕事もまかせてみたいとお考えなのでしょうか?
アン: 仕事の質を落とさずにやってもらえるならね。いつも「優良メーカー」さんを第一に考えていますから。
VP: あした見積もりをお持ちします。
アン: よろしくね。ありがとう。
VP: どういたしまして。

 オフィスにもどる車中の会話

サム: この契約であそこはWPC最大手の顧客になりますね。アポイントが今日でラッキーでしたよ。
VP: ラッキーだって?
サム: パッケージでトラブルが起きたその場に居合わせたのでなければ、どこかよそのメーカーに話が行っていたかもしれません。
VP: さっきの商談がまとまったのはツキのせいではないよ。
 あのパッケージのことは君も聞いてのとおり、かなり以前からゴタゴタしていた。わたしがもちかけたから問題が表面化して交渉の場に持ち出されたのだ。
 君が自分の目で見るまで【高確率セールス】について話したくなかったのはそこなのだ。さっきの売り込みについてよく考えてみれば、ツキに頼った部分はほとんどないことがわかるだろう。今日見たことを君のセールスについての古い観念と比べてはいけないよ。
サム: あなたはずっと、クロージングの質問をしつづけていたようにぼくには思えます。
VP: そう、そのとおりだ。たぶん君があの場で耳にしたのはそれだけかな。
サム: それからあのバイヤーとは前にも取引をしたことがあったので、相手が何を重視しているかあなたはよく知っていました。だから彼女が反論を持ち出す前に対処することができたんです。
VP: 彼女が一回も反論しなかったことに気づいたわけだね。
 しかし君が今言ったような理由でそうなったのではない。彼女は自分の問題に対する解決策を交渉するのに手一杯で、反論する余裕がなかったのさ。
それに強制がなかったから、抵抗もなかったということも考えに入れたほうがいい。
 ほかに気づいたことは?
サム: マイナーな点についてクロージングをしましたよね。完成パッケージの納入要件を尋ねたときですよ。
VP: そう見えたかも知れないが、納品期日を持ち出したのはわたしじゃないよ。
あの話はプロダクトマネジャーのほうから出たのだ。とくにマイナーな点についてクロージングをしようとしたわけではないよ。
サム: では、何があなたのねらいだったのですか?
VP: 先方の納品要件がどうなっているかを探り出したかっただけだ。
サム: そのへんでぼくは混乱しています。画期的で強力なセールステクニックを見せてもらうのだと思っていましたが、あなたはひたすら情報集めをしていました。
VP: ものごとをあるパターンに当てはめ、それをなじみのカテゴリーに分類してしまいたくなるのは人の心の常だ。多くの場合それは役に立つ。いちいち細かいことに心を砕いたり計画を立てたりせずに、経験と知識を新しい状況に当てはめればことが済むからね。
 しかし【高確率セールス】のように、何かほんとうに新しいことを学ぼうとするときには、そのようなやり方は逆効果だ。
 ほんとうに新しい概念は既成の枠にははまりきらない。この方法自体がまったく新しいのだ。
 実をいうと君は今朝、きわめて強力な新しいテクノロジーを目のあたりにした。だがそれに気がつかなかったのだ。明日まで待ちたまえ。見積もりを持っていって注文書をもらったときに、【高確率セールス】の効力がはっきりとわかるはずだ。
サム: 正直に言っておっしゃることがどうしてもわかりません。
 今日の一部始終を見ていて、あなたがあの状況を実に手際よく処理していたのはわかります。効果的な売り込みではなく、さりげない、単なる幸運に見えたというあたりがむしろ、ぼくには見当もつかない何かをあなたがしたためなのだ、ということもかろうじて見えてきました。
 しかしなぜ、あなたはぼくがまるで理解できない現場を体験させたのですか?
VP: 君の思考を自由に解き放ってみたかったのだ。たいがいの人にはとても困
難なことだよ。とりわけ自分がすでに精通している分野ではね。
サム: ではそろそろ説明していただけませんか? それとも明日もまたあなたが別の客に対応するのを見ているほうがよいですか?
VP: いや、話すときがきたようだ。オフィスにもどったら、いっしょに【高確率セールス】の原則を始めから見直してみよう。


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『売り込まなくても売れる!』

著者:ジャック・ワース、ニコラス・E・ルーベン
坂本希久子訳 神田昌典監修
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